肛門外科
肛門外科

肛門外科は、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろうをはじめ、肛門周囲膿瘍、便秘、便失禁、直腸脱など肛門疾患全般を診療する科です。日本人の約3人に1人が痔で悩んでいるといわれ、身近な病気のひとつです。症状を放置すると悪化や他疾患の発見遅れにつながるため、早期受診が重要です。当院では日頃から患者様の恥ずかしいという気持ちを汲み取りながら診療を行っています。痔やおしりの症状でお困りの方は、一人で悩まずにぜひご相談ください。
痔核はできる場所により外痔核と内痔核に分類されます。
外痔核
肛門出口に豆くらいのいぼができます。特に血栓性外痔核は血栓により強い痛みと腫れを引き起こします。長時間の座位や強いいきみや冷えが原因です。症状が強い場合が多く、軟膏や鎮痛剤などの薬物治療または血栓摘除術を行います。
内痔核
肛門内にいぼ痔ができます。排便時出血が主な症状ですが、大きくなると肛門から脱出して痛みも出る場合があります。外痔核の併存もあります。便秘・飲酒など生活習慣・長時間座位・排便習慣・出産などが主な原因です。
嵌頓(かんとん)痔核
内痔核が脱出し、肛門括約筋に締め付けられ血流障害を起こした状態。激しい痛みや腫れ、出血が起こります。初期は鎮痛剤や坐薬を使用し腫れが引けば自然に戻りますが、再発を防ぐため手術が必要になることもあります。
痔核の治療には、保存的治療として生活習慣・排便習慣の是正、薬物療法などがあります。日常生活では食事に注意し下痢や便秘にならないようにしましょう。排便習慣として便意は我慢せず5分以内に排便を行うことが肝心で、いきみや長時間便器に座り続けることを避けるよう心がけましょう。肛門からの出血の場合は別に大腸の病気がかくれていることもあるため大腸内視鏡検査をお勧めします。
便秘特に硬便が出た時や頻回の下痢のときに、肛門の皮膚が裂けて生じる疾患です。排便時に鋭い痛みや少量の出血がみられます。痛みは排便後もしばらく続くことがあり、慢性化すると肛門の皮膚が盛り上がった「見張りいぼ(もしくはスキンタグ)」が形成されることもあります。治療はまず便通の改善や軟膏の使用、温浴など保存的療法が基本ですが、慢性化した場合には手術が必要となることもあります。早期受診と適切な治療によって症状の改善が期待できます。痔核と同じく、切れ痔による出血と思っていたら大腸に別の病気が隠れていることもあるため、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
肛門内からの細菌感染で膿がたまる病気です。痛み、腫れが日に日にひどくなります。治療は内服では効かず切開排膿が原則です。痔ろう化した場合は根治手術が必要です。
肛門周囲のかぶれ・湿疹で、便や汗、感染などが原因。かゆみやピリピリした痛みが現れます。清潔保持と軟膏治療が基本ですが、肛門の過度な拭き取りや洗浄、医師の指導のもと治療します。
排便時の刺激や炎症による歯状線付近のポリープ。小さいうちは無症状ですが、大きくなると脱出や出血、痛みを伴います。単独なら切除可能ですが、裂肛や痔核など合併症がある場合はそれらも含めた治療を行います。
肛門周囲の汗腺に起こる慢性化膿性疾患。痛みや腫れ、しこりが繰り返し現れ、痔ろうを合併することも。急性期は切開排膿し、根治には病変部の切除手術が必要です。
排便をコントロールできず、便が漏れる状態。漏出性便失禁と切迫性便失禁があります。食事・生活習慣の改善や骨盤底筋体操、薬物療法を行い、重症例では手術も検討されます。人知れず悩む方も多く、症状を放置せず相談することが大切です。
骨盤底筋の低下により直腸が肛門から脱出する病気で、高齢女性に多く、子宮脱や膀胱脱を伴うこともあります。進行すると歩行時にも脱出し、腫れや痛み、出血が起こります。外科手術が原則になります。軽度のものであれば当院で日帰り手術でも可能ですが、重度のものでは腹腔鏡下直腸固定術が必要となります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による性感染症で、肛門や性器にいぼ状の病変ができ、次第に増殖。出血することもありますが痛みは少ない。薬物療法や切除・焼灼術が行われます。性感染症のため、生活上の注意も重要です。
当院では、患者様の負担を最小限に抑え、術後も日常生活へ早期復帰できる局所麻酔での日帰り手術を実施しています。病気の状態や症状に合わせた適切な治療法をご提案し、手術はすべて予約制で行います。
初診・診察(初日外来にて)
まず患部の診察を行い、症状や病状を詳しく確認します。そのうえで、手術の適応か、他の治療法が適しているかを判断します。
手術前説明・予約(初日外来にて)
手術が必要な場合、日帰り手術の流れや注意点についてご説明し、同意書へのご署名いただき予約をお取りします。必要な検査(血液検査・心電図など)も事前に行います。
手術当日
患部に局所麻酔を行い希望があれば鎮静剤も併用します。手術時間は病状にもよりますが約20〜30分程度。術後は院内で30分〜1時間ほど安静にしていただき、問題がなければその日のうちにご帰宅いただけます。
術後の注意・ご説明(手術当日)
術後の過ごし方、痛み止めの服用、入浴・排便の注意点をお伝えし、必要なお薬を処方します。
術後診察・経過観察
手術後は数回の診察を行い、傷の治り具合や症状を確認します(手術の内容によっては術翌日に受診が必要です)。日常生活やお仕事への復帰の目安もご案内します。
ジオン注射(ALTA療法)とは、内痔核に対して行う注射治療です。痔核の原因となる血管の周囲にジオン液(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸)を注入し、痔核を縮小・硬化させる治療法です。メスを使わず、出血が少なく、日帰りで治療可能(要予約)であり患者様に負担が少ない治療であるという大きな特徴があります。適応となるのは主に内痔核で、外痔核や痔瘻などには行えません。また、症状の程度によっては下記の結紮切除手術と併用することも多く、診察時に医師が適応を判断しご説明します。
治療は4段階に分けてジオン液を注入し、痔核を根元からしっかり固めることで脱出や出血を改善します。術後の痛みや出血は比較的軽いとされておりますが、副作用としては頻度は少ないですが、出血・痛み・発熱・頭痛・直腸潰瘍などがあります。また再発が約10%ほど認められ、その際は程度にもよりますが再度注射療法を行うか下記結紮切除術が必要となります。
痔核根治治療として長年施行されている術式です。方法としては、手術台にうつ伏せに寝てもらい、局所麻酔を行ったのち痔を切除し糸で結紮する方法です。希望により鎮静剤も併用いたします。大きさや程度・数によっては上記のALTA注射療法も併用することがあります。根治は期待できるのがメリットですが、術後痛みや出血のリスクが多少あるのがデメリットですので、十分な説明のもと行います。術後は翌日の診察に来ていただき出血の有無などを確認します。不整脈などの心疾患や脳疾患をお持ちで血をサラサラにする薬(抗凝固薬)を内服中の方など出血リスクをお持ちの方は、入院での手術が望ましいため専門病院への紹介を行うことがあります。
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